(Ⅵ)にゃんこ亭の猫たち ⑨抱っこ白黒猫 (2006年)

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ひとりぼっち

(Ⅵ)にゃんこ亭の猫たち ⑨抱っこ白黒猫 (2006年)

 

K子さんから「白黒猫の去勢手術をしてほしい」という電話があった。

「あなたの庭にずっといるのだから、つかまえてよ!」という。

「そのうち旅に出ていくわよ、男の子ですもの」

応えるわたしの声は、限りなくテンションが低い。

「いつ出て行くっていうの!ずっと居るじゃない!

あなたはそうやって引き延ばそうとするのね。

かわいそうな子猫を増やさないようにしないと!」

猫の保護活動をしている彼女は、猫のことになると、強いのだった。

わたしのような、いいかげんな猫使いを許さない。

 

白黒猫が、にゃんこ亭に顔を出すようになってから、

もう、かれこれ、二年が過ぎようとしていた。

ということは、少なく見積もっても、3、4歳になっているはずだ。

「・・あまり年齢が高くなってからの去勢手術は、

猫にとってダメージが大きいというわよ。

それに、わたしには、つかまえられないと思うな。

なんといっても、ケンカ大好きの危険猫だもの」

「・・たしかに、そうよねぇ」

K子さんの〈たしかに〉は、〈危険猫〉に対しての同意だった。

 

それでも、K子さんは諦めない。

せっつくように電話をよこす。

 

(なんとかしないといけないかも・・)

だんだん、わたしは焦りだした。

それでも、相手は、あの危険猫だ。

(捕まえようとしたら、ひどい目に合うんだろうなぁ)

という思いはぬぐえない。

 

秋の日。

白黒猫は、のんきそうに、いっぴきで庭にいた。

わたしの視線に気づくと、近寄って来た。

ドアを開けて、頭をなでる。背中もなでる。

目を細めて、ゴロゴロ、ご満悦だ。

[ひょい]・・白黒猫を抱き上げるのに成功した。

ジタバタしない。爪も出さない。噛んだりもしない。

「あれ?こんなに簡単でいいの?」というほど、

すんなりと、白黒猫はわたしの腕の中におさまっていた。

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