(Ⅶ)にゃんこ亭の猫たち ④去勢手術 (2007年4月)

去勢後の猫庭猫 

(Ⅶ)にゃんこ亭の猫たち ④去勢手術 (2007年4月)

 

あいかわらず、ケンカに明け暮れていたものの、

外断熱のハウスも持ち、首輪も付けることになった大吉は、

ほんの少し、穏やかな顔つきになったように見える。

白い毛並みは、かがやくように白くなってきた。

 

野良猫が汚れているのは、

野を駆けているせいばかりではないらしい。

・食餌が十分足りているか。

・情けを掛けてくれる人がいるか。

・寒さ、暑さをしのぐことのできる落ち着き先があるか。

これらの環境が整ったときに、

身づくろいに目が向くのではないかと思う。

 

大吉が落ち着いてくると、いよいよ、

去勢手術の話が本格的に動き出した。

大吉をキャリーバックに入れることが出来れば、

あとは、K子さんの知り合いの獣医師が、

手術をしてくれる段取りになっていた。

ひと月前には、一度失敗している。

大吉が直前に勘づいて、逃げ出したのだった。

 

さて、今回の攻防はいかがなものか?

 

さりげなく、大吉を抱っこして、

そのままストンとキャリーバックに入れ込んだ。

瞬間はもがいたものの、諦めたのか、じっとして、

防御というほどの事はしないのだった。

暴れん坊が、観念している姿は、さびしいものだ。

だまし討ちにしたようで、こちらの気もちがへこんでしまう。

 

手術の後で、引き取りに行った。

もう、放してもよいという事だったので、

連れ帰ってすぐに、庭に放した。

横目で冷ややかに、わたしを見ている。

『うそつき!』となじられたような気がした。

怒る猫

うそつき!

プイッと、まっしぐらに庭の外へ走り去ってしまった。

もう、帰って来ないかもしれない。

・・去勢手術は、腕力も削ぐはずだ。

これまでの野生的な生活は続けられないだろう。

そう思うと、わたしはひどく落ち込んだ。

 

翌日。

夕日がまぶしく庭を照らしていた。

垣根の向こうから、『わぁ~お』という声が近づいてきた。

『わぁ~お、わぁ~お』

あの野太い声は、大吉の声に間違いない。

ずぼ!垣根の間から白い大吉の顔がのぞく。

猫の帰還

ただいま!

 

ドアを開けた。

ととと・・ぽん。部屋の中に入って来た。

「おかえり!大ちゃん」

どれだけ安堵したことか!

こうして、大吉は、我が家の猫になった。

コメント

  1. みつば より:

    初めてのコメントです。
    楽しみに読んでいます。
    うそつき!という絵が、ダイキチくんの気持ちにピッタリだと思いました。

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