(Ⅻ)にゃんこ亭の猫たち
④小顔になっていく大吉
大吉はクロミちゃんがこの世から消えたことを、
あるいは・・命の灯が消えつつあるころから、
分かっていたのではないかと思う。
クロミちゃんが、にゃんこ亭に来なくなってからも、
大吉は、М氏宅の庭に通い続けていたようだったし、
猫特有のインスピレーションで、
クロミちゃんの気配が薄くなっていることに、
ずいぶん前から気づいていたに違いない。
どんなに邪険にされても、
そっぽを向かれようとも、
大吉はクロミちゃんが大好きで、
しつこいくらいに付きまとっていた。
人ならストーカーで訴えられていたかもしれない。
クロミちゃんが逝ってからというもの、
大吉もどんどん元気をなくして、
秋口くらいからは、なんだか精彩を欠いた。
大きかった顔の筋肉が、しぼんだ感じだった。
お腹周りは相変わらず横綱級なのに、
顔はキュッと小顔になって、
まるで幼い少女のようなのだった。
アンバランスに思えた。
推定でしかないけれど、
大吉の年齢は、まだ10さいくらい。
そんなに老けこむ年ではない。
パッと明るい表情の猫だったのに、
どこか悲しげに変貌した。
・・まるで、なにかの暗示のように。
コメント
クロミちゃんも亡くなって、さみしくなりましたね。ダイキチくんは、どんなにガッカリしたことでしょう。
[暗示]の意味するところが、気にかかります。