⚫最終章Ⅱ ⑥手形

愛猫の足紋 飼い猫
大吉の手形

⚫最終章Ⅱ 

⑥手形

 

大吉を見送ったセレモニーホールは、
規模の小さいところだったけれども、
家族として生きた動物たちに、
あたたかい心遣いをしてくれるところだった。

大吉を火葬をする前のこと。
係の人が、スタンプ台を手にやってきて、
「足形を残しましょう」という。
「どのカードがよろしいでしょう?」
そういって、何枚かの見本のカードを取り出した。
うすいピンクの花柄や、
青い空と雲の模様や、
緑のクローバーで縁取られているものなど。
「クローバーでお願いします」
大吉はきっとクローバーの香りが好きだろう。
「はい。では、クローバーを・・」
そして、大吉の右前足にポンポンと、
インクのしみ込んだスポンジを押し当てた。
「ごめんね。ちょっとギュッと押さないと、
きれいに取れないものだからね・・」
やさしげに大吉にいってから、
「あとできれいに拭きますので」
と、これは私たちに頭を下げた。
そんな気づかいが心に沁みた。
年配の男性職員だった。

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病んで痩せた大吉の手形(足形)は、
思っていたよりも、かなり小さかった。
7月から亡くなるまでの一か月の闘病が、
どんなに激しいものだったかを思わせた。
・・けれども、
大吉のもの、として、
形のあるものが残ったことは、
ふしぎなことに、ありがたかった。
たくさんの思い出があるのに・・・

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