第二部Ⅷ ⑧【G】との戦い

飼い猫

第二部Ⅷ ⑧【G】との戦い

[その1]

夫が所用で外出した日のこと。

サンルームのあたりで凛がソワソワしていた。カーテンを揺らしたり、最近は顧みない自分のおもちゃ箱に頭を突っ込んだりしている。

あ!いる!なんかいる!

いつもの小さな[家クモ]かな、と笑って見ていたが、どうも様子がおかしい。
「どうしたの?」
窓を閉めるついでに、凛が気にしているあたりを覗いた・・・ら、
あ!いる!なんかいる!
4㎝くらいの黒いヤツ。
大きい!!!

腰が引けた。どうしたらいいの!
・・鳥肌が立った。
あれは、[G]に間違いない。
サンルームにいるって事は、
庭から入ってきたって事だ。

凛に目をやると目が合った。
『ね、やなヤツ、いたでしょ~』と言ってる目付き。


わーー(泣)
虫全般苦手!!!
怖い! 足がすくむ・・・
でも、なんとかしなくちゃ!!!

「凛ちゃん。見張ってて。
オバは戦う準備をするから!」
凛は『わかった!』と頷いた。

わたしは大急ぎ、一日分の新聞紙を丸めて棒を作った。
その間も目はサンルームに釘付けだ。
[G]が動いたら大変な事になる。
目の片隅には、[G]から目を離さない凛の姿も見える。
なんてけなげなの!
しかも本当に心強い!

丸めた新聞棒を一振りしてみる。
シュン・・
頼りない音だ。
これでは[G]には勝てない。
もっと、強固にしないと!
ガムテープで数カ所補強。
ブン!
強く風を切った。
よし。これでいい。
とにかく退治しなければ!

 

【G】との戦い
[その2]

恐怖なんだか武者震いなんだか、
小刻みに震えてくる。
顔はひきつり心臓はバクバクだ。

左手には殺虫剤。
残念ながら[G]用は無いので、
ハエや蚊退治用のものだけれど、
これでおびき出して新聞棒で叩きのめす作戦だ。

殺虫剤噴射!
ノロノロ・・・出てきた!
それを見て思ったのだけれど、
[G]の出てくる感じって、
意外なことに、道に迷った人の戸惑い方に似ている気がする。
(どこに行ったらいいんでしょう?
困ってるんですぅ)、、、みたいな。
だからといって、温情はかけないよ、わたしは。
バン!バン!!バン!!!

最初のバン!で凛は逃げ腰になった。
「凛ちゃん、いてよ!
ここにいてくれるだけでいいの!」
と言うと、踏みとどまった。
伝わったと思うの、言葉が。
あるいは、わたしの必死な形相か。

その後も凛はひるむことなく、
一緒に戦ってくれたのだった。
背中を弓なりにして、ダミ声で『ニヤー!ニヤー!』と何度も鳴いた。弓なりの背中はちょっとした小山のようだったし、鳴き声も「ニ」に濁点が付いてる感じの野太い声。
うなり声に近いのだった。
挑む凛の姿は初めて目にするものだったけれど、心強いのだった。

5回目のバン!で、凛は跳び上がるようにして逃げ出した。
大きな音が苦手なのに、よく頑張って一緒に戦ってくれたものだ。
おかげで、 [G]のヤツは昇天した 。ヤッタ!

でも、やっつけたのはいいけれど、
後の始末をどうしたらいいものか。
勝利の余韻に浸ること無く、しばしボーゼン。
・・クリーナーで吸うしかないなと思う。
あまりの恐怖パニックと戦いの興奮から、スカスカになったわたしは、正常な精神状態では無い。なにしろ、[G]は復活するに違いないと考えているのだった。クリーナーのホースをガムテープで蓋をする間も、わたしは真剣そのもの。

床を消毒するやら大騒ぎが続いたけれど、なんとか終わった。

「凛ちゃーん。おわりましたー」
凛も出てきた。
やっと勝利を実感。
お互い、がんばったよね!!!

でも、
翌日から強烈な筋肉痛が!
ふくらはぎ、二の腕、手首、大腿、背中、腰、手のひら・・などなど、次から次に出てくるのだった。
全身運動をしたらしい。

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