第二部Ⅸ ①年一の顔見世興行
【その1】
今年も行ってきました。
[顔見世興行]と名付けている、
3種混合ワクチンを受けに。
行くまでの大変なことといったら!
朝食後。
オジとオバの暗号のようなやりとりに、凛は何の反応も示さなかった。
ホットカーペットの上でヌクヌクと延びていただけ。
気づかなかったのかしら?
シメシメ・・と思ったのだった。
ところが、オジが書斎に行ったとたん、ムクッと起き上がり、こそ泥走りでコソコソどこかへ隠れた。
(あ、こそ泥走りってのは私の造語でして、猫が警戒して背中を低くして走る様子のことなの)
捜したら、なんのことは無い私のベッドの下。すぐに見つかる所に隠れているあたり[観念している]と思ったのは私の勘違いだった。
なにしろ、
捕まえた瞬間から足蹴り開始。
バスケットに入れようとすると、足のかぎ爪をバスケットの縁に引っかける。剥ぎ取ると、また別の足のかぎ爪をガシッとかける。
また剥ぎ取ると爪でガシっと・・
もう、いたちごっこ。
でも、ついに押し込んだ!
やった!思わずにんまり(^▽^) 。
ここまで、なんとふたりがかり。
しっかりとロックした・・はず。
それなのに、凛め!
頭でバスケットの蓋を押し開けて、
再び逃走したじゃありませんか!
え?
うそ!ロックしたのに!
どうなってるの!?
人は混乱状態。
猫は死に物狂い。
またまた捕まえて、バスケットに押し込んで、ロックした蓋をしっかりと押さえ込んだ。
当日予約は申し込んだので、
さあ、行こう!動物病院へ。
【その2】
ギャイーン!!
ウギャー !!
ウギャーオ !!
シャーー!!!
ものすごい怒声だ。
たぶん悪口雑言だろうね。
ものの数分で動物病院に到着したけれど、さんざんわめきちらしたものだから、疲労困憊の様子。ハアハアと荒い息が聞こえている。
「凛ちゃ~ん、どうぞ~」
診察室に呼ばれたとたん、バスケットの中の凛がギュッと身を硬くしたのが、私の手に伝わった。
(どんだけ嫌なんだか・・・)
診察室では、バスケットからなかなか出てこない。しかたがない、引っぺがすようにして引きずり出す。
体重を計測した後、全身をチェック。
この間、凛は猫型の石と化す。
いっさい鳴かずピクリとも動かない。
3種混合ワクチンは、プチュと一瞬で終了。首の後ろの皮部分をビョーンと伸ばして注射するので、痛みは無いらしい。
(まあね、凛がそう言った訳では無いから、本当か否かは不明)
ちなみに体重は、3.95キロ。
大吉の半分にも満たないわ。
獣医はかなりのお話し好きなので、しばしお付き合い。
その間、凛はずっと石なのだった。
車中で威嚇し続けた猫とは別物。
さて、とにかく無事終わった!
来年の黒猫のカレンダーをいただき、ドライブして帰宅。
玄関の上がりがまちにバスケットを置くや、
バン!
凛は、頭で蓋を押し開けた!
・・・あらぁまあぁ・・・
ロック、どうやって外してるの???
おそるべし!であるよ。
黒い塊が、目の前を、
ビューン!!!
風のごとく走り去ったのだった。
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