(5)猫忍者 クロ ②雪遊び (1994年2月)
クロは、ネコジャラシで遊んで以来、
忍びの術をあまり使わなくなった。
それどころか、わたしを見かけると、
ぴょん!
飛び跳ねるようにやって来て、
頭をすり寄せたり、
ときには軽く体当たりなどして、
{大好きアピール}をするようになった。
自由猫の男の子は、我が道を行く。
『おう、おう、おれさまはよぉ』
といって、すぐに腕まくりをすると思っていた。
けれど、クロの場合はちがった。
決して、噛みついたり爪を出したりしない。
いつも静かに庭にいて、
わたしの仕事が一段落するのを、
ひなたぼっこやお昼寝をしながら待っていた。
ふわふわの黒いかたまりは、
おだやかで、いちずなのだった。
猫も人同様、さまざまな性格があるようだ。
めずらしく雪が降った。
一日中降り続いた雪は、庭を白一色に変えた。
こんな雪の日には、猫たちは、
どこでどんなふうに過ごしているのだろう。
そんなことを考えていたら、
クロが雪を漕ぐようにしてやってきた。
白い雪の中で、忍びの猫は、おおいに目立つのだった。
日曜日だったから、娘は朝から大はしゃぎだ。
雪だるまを作るのだと張り切っている。
その相棒をクロがかって出てくれたらしい。
娘の丸めた白い雪玉のまわりで、
黒いかたまりが交差している。
歓声が庭にこだます。
・・雪まろげ・・
この楽しいひとときの絵が、
猫の子にも人の子にも、そっと残れ・・。
コメント