(6)5匹の子猫 ①庭を引き継ぐ (1994年6月)

庭猫 
5匹の子猫たち

(6)5匹の子猫 ①庭を引き継ぐ (1994年6月)

 

クロが姿を消して、

半月ほど経ったある日のこと。

 

月桂樹の下の草陰に、

ちいさな5匹の子猫がいた。

ひっそりと固まって、わたしを見つめている。

そばには、なんと、ぞうきん猫の姿があった。

 

そうだったのか・・。

クロは生まれてくる弟や妹たちのために、

わたしの庭を明け渡したのだ・・。

この推察は、はずれては、いないだろう。

男の子猫は、いずれ旅立って行くとしても、

クロが庭から姿を消したのは突然すぎたから。

 

ぞうきん猫一族の強い絆を思うたびに、

クロの静かなやさしさが、せつなくよみがえる・・。

 

それにしても、5匹という子猫の数は、

子育て上手のベテラン母さんといえども、

たいへんな数ではなかろうか・・。

 

わたしの不安をよそに、

子猫たちは、すくすく大きくなっていった。

縦横無尽に駆けまわっている。

 

黒茶のべっ甲猫が1匹。

三毛猫が1匹。茶トラ猫が3匹だ。

茶トラたちは、よく似ているが見分けはつく。

明るい茶色の茶トラ。濃い茶色の茶トラ。

そして、ひときわ大きな茶トラである。

最初、この大きな茶トラは男の子だと思ったが、

5匹全員女の子であった。

 

庭に来る猫たちに関して、

わたしなりの不文律があった。

それは「むやみに手は出さない」ということ。

ただし、子猫だけが庭にいる場合と、

なんらかの事情で飢えている場合だけは、

手を差し伸べよう、というものだった。

そばに母猫がついているときには、

もちろん、そっとしておく。

マント嬢という例外はあったものの、

この態度はくずさなかったのだが・・・。

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