(Ⅱ)にゃんこ亭の猫たち ⑤ねぎ黒はとてもクール
にゃんこ亭も、このところは、
近隣の猫たちに知られる場所になったらしい。
飼い猫とおぼしき猫の姿も、
ちらほらと目に付くようになっていた。
『ちょっと、いいおみせよ♡』
『めじるしは、おおきな、げっけいじゅ🌲』
こんなウワサが広まったかどうかは定かではないが・・。
(猫たちは、かなりウワサ好きだと、わたしは感じている)
さて、なかでも、わたしが大歓迎したのは、
[ねぎや」という焼き鳥屋さんの飼い猫だった。
名前は「ねぎ黒くん」。白黒猫の男の子だ。
商店街のはずれにある「ねぎや」は、家庭的なお店で、
焼き鳥はもちろんのこと、お料理もおいしい!
小上がりもあるので、子ども連れの家族にも大人気。
土曜日などは、パパママに連れられた幼稚園児や小学生もいて、
焼き鳥にオレンジジュースで、カンパイなんかしている。
みんな、すこぶるつきのニコニコ顔だ。
体の大きな「ねぎや」の大将は、
とても無口な人だけれど、無類の猫好きで、
家を持たない猫たちにも、おいしい鳥をふるまう。
そういうわけだから、
裏路地の猫店も、たいそうな賑わいをみせていた。
ねぎ黒くんは、裏路地の猫店の大将というところだが、
表の「ねぎや」のアイドルでもあったから、
ねぎ黒くんファンの小さなお客さんたちも多数いた。
ほんとうに、いいお店で、わたしも大好きだった。
ねぎ黒くんは、カウンターの端の椅子が定位置で、
きちんとお座りしていることもあったが、
たいていは、そこでのんびり眠っていた。
呼ばれれば『はいよ』というふうに、そのテーブルに行く。
そして、ごほうびのお刺身なんかを貰っていた。
きっと舌の肥えた猫だったろうと思う。
にゃんこ亭のメニューは主にカリカリなので、
お気に召すかどうか・・と思ったけれど、
すっかり、たいらげて満足そうに帰って行った。
何度か、ご来店いただいたものだった。
「ねぎや」で顔を合わせても、チラリと見上げる程度。
『よっ』という感じで、別のテーブルへ去っていく。
・・そのクールさが、また、たまらなく良いのだった。
コメント