(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ②クマくんのいた夏 (2000年7月31日)
買い物に行く途中の道で、クマくんに会った。
「一緒に行く?」というと、連れだって歩き出した。
わたしを見上げながら、しっぽを立てて、弾むように歩く。
ときどきは、よーいドン、と走ることもある。
走るクマくんはすばらしい!
クロヒョウのようにしなやかに、まるで飛ぶように走る。
ぐんぐんスピードを増していって、もはや追いつくことなどできない。
でも、たまには、こうやって、ふたりで(ひとりといっぴきだけれど)、
夏の夕風に吹かれながら、のんびりと歩くのもいいものだ。
クマくんは、М氏に育てられた[猫の人]なので、
買い物をする場所なども良く知っている。
でも、スーパーの中には入らない。
「待っててね」というと、買い物が終わるまで、
近くの植え込みの前で、きちんと待っていてくれる。
その日も、そうだった。
買い物を済ませたわたしの姿を認めると、
クマくんはパッと立って、しっぽをバンバンと振った。
その姿に気づいた小型犬が、キャンキャン、
うるさく鳴いたが、クマくんは完全に無視。
いいね、その動じない姿は!まさにクール!
「帰ろうか」というと、まだ遊んでいたい様子。
『やくそくしたけど、まだ、あそんでるよ』と、
それを告げるために、待っていたようだ。
猫の人の律儀さに感じ入るのは、このような時だ。
時間は夕方の4時半。
真夏のことで、陽ざしはまだ暑い。そして明るい。
もちろん、遊んでいたいはずだ。
「わかった。でも、気をつけるのよ」
『ni』
側溝のところに立って、クマくんとわたしは別れた。
わたしが、わざわざ「気をつけて」といったのは、
その日、モーターバイクに二人乗りした男の子たちが、
パンパンパン!と金属音を響かせて、
蛇行しながら走り回っていたからだった。
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