第二部Ⅲ ③逆襲

飼い猫
作戦を練る

第二部Ⅲ ③逆襲

 

凛はよく吐く。
獣医の診立てでは異常なしだった。
一安心だったけれど、
吐く場所に問題がある。

たとえば、キャットタワーのてっぺんまで行って、
そこから、ぶちまけるように吐いてみたり、
私のベッドの枕に、こんもりと吐いたり、
わざわざ水をしこたま飲んで、娘のバッグめがけて吐いたりする。

(こんなふうだと、どうかしらね?)
・・私たちを試しているのではないか、と疑う。

さすがに度を越すと凛を叱ることがある。
「こら!凛でしょ!なんなの!これは!
どうしてこんなところに吐くわけ?
いいと思っているの!」
首根っこをつかまえてゲロの所で脅すように怒る。

 

 

さて、そんな日の夜。
真夜中の草木も眠っているような時刻に、
ジャジャジャジャ!!!
ものすごい勢いで走ってきて、
ドン!!!!
私のベッドに飛び乗る!
そればかりか、
私の体の上をジグザグに歩きまわる!!
尖ったヒールのような足で、だ!
寝ぼけ眼のわたしはびっくりして飛び起きる。
くだんの猫はもう姿を消している。

「こんなところには吐かないでくれるかな。
凛ちゃんはお利口さんだから分かるよね」
優し口で懇願した日には、逆襲はない。

イイ子ぶりっこ

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