⚫最終章Ⅱ
①花に埋もれる
8月11日
お棺と決めた箱に、
パールピンクの美しい和紙を貼った。
中に大吉愛用のベッドを入れて、
大吉を横たえた。
![花に埋もれる猫](https://nekotukai.com/wp-content/uploads/2022/08/IMGP0219-300x226.jpg)
花に埋もれる
ありったけの氷。
ありったけの保冷剤。
痛々しいまでの小さな なきがら。
保冷剤はさぞ冷たいだろう・・
膿でつぶれた右目。
黒く腐ってしまった口もと。
痩せて骨ばった体。
その全部に花を添えよう。
かぐわしい香りで包もう。
あふれんばかりの花々で埋めつくそう。
ピペリカムの赤い実
大輪の白百合
ピンクと紫のスターチス
黄色のミニヒマワリ
可憐なピンクのバラ
濃紫のリンドウ
クリーム色のトルコ桔梗
大吉の好きだった庭の月桂樹も一枝・・
口もとには可憐なバラを置こう。
大きな白百合は帽子のようだ。
花が似合って、
なんとまあ、かわいらしいこと・・
これ以上の美しい猫は、
世界中にまたと居ないだろうと思う。
⚘~~⚘~~⚘~~⚘
この日は、
大吉の死を知った猫友だちが、
たくさん、お別れに来てくれた。
ケンカばかりしていた頃の大吉のことや、
全てに満ち足りていた先ごろまでの大吉のあれこれ。
思い出話に笑ったり、涙ぐんだり・・
お世話になった獣医師に知らせたとき、
「大ちゃん、どうしてるかな・・と、
いま、みんなで話していたところでした。
大ちゃんは、がまん強い猫でしたね。
本当に、がんばりましたね。
おつかれさまでした・・」
いつもはトーンの高い声の人の、
ひっそりと押さえた低い声に、
大吉の死は、いよいよ真実なのだと思う。
明日は火葬・・。
コメント