⚫最終章Ⅱ ①花に埋もれる

猫の棺 飼い猫

⚫最終章Ⅱ  

①花に埋もれる

 

8月11日

お棺と決めた箱に、
パールピンクの美しい和紙を貼った。
中に大吉愛用のベッドを入れて、
大吉を横たえた。

花に埋もれる猫

花に埋もれる

 

ありったけの氷。
ありったけの保冷剤。

痛々しいまでの小さな なきがら。
保冷剤はさぞ冷たいだろう・・

膿でつぶれた右目。
黒く腐ってしまった口もと。
痩せて骨ばった体。
その全部に花を添えよう。
かぐわしい香りで包もう。
あふれんばかりの花々で埋めつくそう。

花に埋もれる猫2

 

ピペリカムの赤い実
大輪の白百合
ピンクと紫のスターチス
黄色のミニヒマワリ
可憐なピンクのバラ
濃紫のリンドウ
クリーム色のトルコ桔梗
大吉の好きだった庭の月桂樹も一枝・・

口もとには可憐なバラを置こう。
大きな白百合は帽子のようだ。
花が似合って、
なんとまあ、かわいらしいこと・・
これ以上の美しい猫は、
世界中にまたと居ないだろうと思う。

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この日は、
大吉の死を知った猫友だちが、
たくさん、お別れに来てくれた。
ケンカばかりしていた頃の大吉のことや、
全てに満ち足りていた先ごろまでの大吉のあれこれ。
思い出話に笑ったり、涙ぐんだり・・

花束

花束

 

お世話になった獣医師に知らせたとき、
「大ちゃん、どうしてるかな・・と、
いま、みんなで話していたところでした。
大ちゃんは、がまん強い猫でしたね。
本当に、がんばりましたね。
おつかれさまでした・・」
いつもはトーンの高い声の人の、
ひっそりと押さえた低い声に、
大吉の死は、いよいよ真実なのだと思う。

明日は火葬・・。

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