(4)マント嬢 ④午後2時に

庭猫 
美しいマント嬢

(4)マント嬢 ④午後2時に

 

約束の日は日曜日だった。

 

「来ますかねぇ・・」

朝から、夫はニヤニヤ笑ってばかりいる。

そして、ときおり、

「いや、来たら、たいしたもんだよ。

もう、そんなことになったら、猫にひれ伏すよ。

でもさ、考えてみてよ。

百歩ゆずって、ことばが分かったとして、

人と約束できるとは思えんよ。

だいいち、時間がわかるわけ?

あいては猫だよ、猫!」

そういって、嘲笑するのだった。

 

「ふん!来ますよ!」

わたしは、信じていた。

だれがなんといったって、あの猫は来る!

あのものごしは、ただもんじゃないっての!

時間もわかっていたようだったし、

庭の方向も確かめていたのだから。

 

「じっさい目にしなかった人たちって、かわいそ」

わたしは大げさに、ためいきをついた。

 

娘は、だんだん、わたし側になって、

「来るといいね!楽しみだね!」

約束の「午後2時」を心待ちにしている。

 

そわそわと窓のあたりを気にかけていたら、

濡れ縁に影が動いた。いた!

昨日の猫だ!

時計を見ると、2時5分!

やっぱり、来てくれたのだ!

「ほうら、ごらんなさい!」

わたしは、嬉しくて嬉しくて、破顔一笑といった感じだ。

 

「わぁ。きれいなねこちゃん!」

娘が駆け寄って、窓を開けた。

 

「来てくれてありがとう・・うれしいわぁ」

わたしは、網戸を開けて、猫を招きいれた。

 

猫はゆったりと中に入り、

当然だという顔をして、きっちりとお座りした。

 

夫はびっくり驚いて、約束通り、猫にひれ伏した。

 

そして・・

もちろん、わたしは千円をゲットして、

わたしの賭けた千円と合わせて、

敬意をこめて、猫缶を買ったのだった。

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