(6)5匹の子猫 ⑥転宅 (9月中旬)
あれ?
猫たちの姿が見えない。
いっぴきもいない。
窓を開けても、シンと静まり返っている。
ぞうきん猫が出かけているときはあっても、
子猫全員、いないということは、なかった。
いつもなら、音を聞きつけた5匹のおチビどもが、
パラパラと物置の下から出てくるのだが・・。
もしや、「転宅」?
猫は子育てをしているとき、
そこが居心地のよい所だとしても、
たびたび場所替えをする。
3、4か所くらいの場所を持っていて、
移動をくり返すようなのだ。
わたしは、それを転宅とよんでいたが、
猫は、なぜ転宅をするのだろう。
こちらが思っているほど、
親しい関係にはなっていない、
という親猫の意思表示なのだろうか?
あるいは、ひとつところに留まることは、
むしろ危険だということだろうか?
それとも、人が心変わりしやすい生き物だと、
いつかどこかで知ったのだろうか?
「転宅」に対するわたしの推察は、
【子猫たちがひとり立ちしたときのため!】
・・これに尽きる気がする。
自由猫として生きぬくためには、
安全な場所を多く知っていなければならない。
転宅をくり返すことで、安全な場所を教え、
その見極め方を体験させているのではないか。
わたしはそのように見当を付けているのだが・・。
それにしても、あらたな場所はどこだろう。
そこに行きつくまでの道中を考える。
車にしろ人にしろ、危険がいっぱいなはずだった。
そう思って、表を捜すと、いた。
ツツジの植え込みの中にひそみながら、
移動しているところだった。
わたしは、交通整理のおばさんに早変わりして、
子猫たちが車道を渡り終えるのを確認したのだった。
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