(8)にゃんこ亭の猫たち ⑥クマくんの人的忖度

庭猫 

(8)にゃんこ亭の猫たち ⑥クマくんの人的忖度 

 

近所にとてもすてきな雰囲気の、ミセスKという人がいた。

この人も、大の猫好きである。

クマくんは、わたしの家のほかに、

ミセスKのお宅にも出入りしていた。

 

ある日、歩道にクマくんがいたので、

抱っこしたり撫でたりして遊んでいた。

クマくんも『うれしくてたまらない』といった様子。

わたしの腕に長いしっぽをからませたりして、ご満悦だ。

 

その時、角を曲がって、ミセスKの姿が見えた。

距離としたら20メートル先。

だれかと、談笑しているようだ。

かすかに笑い声が聞こえている。

 

猫の視力はあまりよくない。

人の視力でいえば、0・1から0・2くらいらしい。

20メートルも先のものは、ぼんやりとしか見えないという。

 

笑い声に反応したのだろうか・・。

クマくんは、急に、わたしの腕のなかで、

『降ろしてよぅ』とバタついた。

「いいじゃないの~」

『だめだめ!降ろして』

ジタバタジタバタ・・。

なおもギュッと抱きしめるわたし。

『降ろせよ!』

4本の脚を踏ん張って、とうとうすり抜けた。

 

そこへ、すてきなミセスK、登場!。

「あら、クマくん。遊んでもらって、いいわねぇ」

やさし声でいう。

クマくん、デレデレ。スリスリ。

「いっしょに来る?」

しっぽがピンと跳ね上がっって、先に立って歩きだした。

わたしのことは、ほっぽり出す気だ。

クマめ~💢

 

黒くて長いしっぽが、前になったり後ろに付いたりしながら、

ミセスKと一緒に、遠ざかって行った。

「ふられちゃったわ」

わたしはミセスKにバイバイと手を振った。

 

30分後。

濡れ縁にクマくんの姿が!

「あれぇ、どしたの?ミセスKのお宅じゃないの?」

わたしは、ちょっと冷たくあしらう。

つーん、って感じ。

クマくん、開けたドアから、スラリと入ってきて、

『だってぇ、しらんぷりもできないさ。ね!』

かる~く、かわすと、

『ごめんね。大好きだよ』

シャアシャアと、のたまうのだった。

 

いつの間にか、すっかりジゴロ猫・・。

コメント

  1. PINO より:

    毎回、楽しく読ませていただいてます。
    クマくん、おもしろい猫ちゃんですね。ミセスkも若月さんも、どっちも大好きなんでしょうね。ふたりの女性の間で揺れ動く⁉️男の子の猫ちゃんアルアルですね。

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