(Ⅳ)にゃんこ亭の猫たち ④ペンダントの話
💎その1『失くしてしまったの』
黒いゴムにビーズを通しただけの簡単な首輪を、
クロミちゃんとタクちゃんに作ってあげてから、
三週間ほど経った頃のこと。
【(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ⑦最初の首輪 参照】➡
にゃんこ亭に来たクロミちゃんの首に、
ペンダントが見当たらない。
「あれ?ないね。なくしちゃったの?」
下を向いて、うなだれている。
猫も、うなだれるのである。
「もしかしてクロミちゃんのおうちに落ちてるかもよ」
なぐさめても、『にぃ・・』と悲しげに鳴くばかり。
夕方、帰宅した娘が、
「たしかビーズが残ってたはず」と、
大粒の赤いビーズを組んで花を編み上げてくれた。
なかなか素敵な赤いバラだ。
「クロミちゃん、これ、どう?」
うなだれていた顔に、パッと赤みがさした感じ。
いやいや、黒い猫だから、赤みはささないけれど、
たしかに表情が明るく華やいだのだった。
「お気に召したようね♡」
娘も喜んで、それを黒いゴムに通して首に掛けてあげた。
大きな赤い花は、黒い毛並みにとても似合っている。
もとの白い筒状のガラスもよかったけれど、
娘の作った花は、立体的で重みもあり、とても目立った。
クロミちゃんは、がぜん元気を取り戻した。
『グルゴロ~ン、グルゴロ~ン』
庭の真ん中で、喜びの歌をうたい上げた。
さすが歌姫!!その歌声はひびき渡った。
午後、М氏から連絡が入った。
「椅子の下にペンダントが落ちていたよ」と。
「それなら、娘の編んだ赤い花のペンダントは、
サンちゃんにあげて、クロミちゃんには、
もとの白い筒状のペンダントに戻して下さいね」とお願いした。
М氏はそのようにしてくれたのだったが、
翌日、にゃんこ亭を訪れたクロミちゃんの首から、
またしても、ペンダントは消えていた。
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