(Ⅵ)にゃんこ亭の猫たち ⑦戻ったり離れたり
二匹の男の子猫たちーーハンサムくんと白黒猫はーーは、
毎日のように、ケンカに明け暮れていた。
しかも、そのケンカはにゃんこ亭の庭で繰り広げられた。
そのことが、わたしの悩みの種だった。
ケンカの唸り声が聞こえない時期は、
二匹はそれぞれに、どこかへ遠征しているようだった。
「居なくなったな。やれ嬉しや」とホッとしていると、
またぞろ『ギャー』『ウオー』という唸り声・・。
このくり返しだった。
元気だったか、という安堵の思いもありながら、
「あ~あ、また帰って来たみたい・・」
わたしは、ひどくガッカリした。
二匹の猫たちの行儀の悪さは、腹立たしかった。
この時期、この二匹には、おやつも出していない。
ニセマンでさえ、にゃんこ亭で騒ぎは起こさなかった。
【(8)にゃんこ亭の猫たち ⑧ニセマン 参照】➡
そもそも、外猫は、どこかの空き地でケンカするのじゃなかろうか。
何度か、クマくんと獅子丸くんのケンカはあったものの、
それは、のどかで、ごっこ遊びのようだった。
事実、ケンカの真似事が終わると、いっしょに帰って行ったものだ。
【(8)にゃんこ亭の猫たち ⑩猫合戦 参照】➡
二匹の悪者が、にゃんこ亭を[戦いの場所]にしてから、
かれこれ二年の月日が過ぎようとしていた。
そんなある日。
友人のK子さんから情報がもたらされた。
「ハンサムくんは縄張りをかえたらしい」
K子さんは、猫の保護活動をしている人なので、その情報は信頼できた。
よかった!これで、唸り声に悩まされることもなくなる。
わたしは心底、嬉しかった。
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