(Ⅷ)にゃんこ亭の猫たち ⑤大吉の一日

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さあ、お出かけ

(Ⅷ)にゃんこ亭の猫たち ⑤大吉の一日

 

朝。

出勤する夫と一緒に、大吉は玄関から出る。

 

玄関まわりの匂いをかいで、じっと動かないこともある。

数軒先まで、一緒に歩いて、ふいに植え込みの中に入ることもある。

そうかと思うと、忠犬のごとく、

バス停の少し手前まで行き、大きく鳴いて見送ることもある。

 

その後は、張り切って、縄張りの見回りだ。

猫道一丁目の銀座通りから、ほの暗い裏路地まで、

ジグザグに歩き回っているようだ。

時間にすると一時間くらい。

 

『やれやれ、けさも、いじょうなし!』

庭から、ご帰還。

最近では、クロミちゃんよりも先に物置の上にいる。

もちろん、クロミちゃんがご出勤あそばしたら、

サッと、その場所から移動する。

にゃんこ亭をしきるのは、あくまでも、クロミちゃんなのだ。

大吉は今では我が家の猫だとしても、ずっと家来という構図。

『クロミ姐さん。きょうも、乙すてきでさぁ』

お世辞もわすれない。

『ぷん!』

クロミちゃんからの信頼は、相変わらず皆無。

それでも、同じ空間に一緒に居られる・・

それが、大吉にはしあわせなことらしい。

クロミちゃんが庭にいる限り、大吉もずーっと庭にいる。

金魚のフンみたいに、くっついて離れない。

とにかくクロミ姐さんの後ばかり付いて回るので、

『あー!うざい!あっちへおいき!』

猫パンチを張られようが、物置から付き落とされようが、

『クロミさま!いのち!』・・いっこうに、へこたれない。

その健気さには驚くばかりだ。

黒猫と白黒猫

クロミさん、ぼくんちです

 

晴れている日の夕方。

夫が帰る時刻になると、

朝、見送ったあたりの植え込みの中に潜んでいる。

足音で分かるのか、

に~・・とかわいい声で鳴くという。

『おかえり』か『おじ』か。

いずれにしろ、夫は嬉しくて目を細める。

にゃらーんスカッ!

にゃらーんスカッ!

 

雨の日や寒い日の夕方は、家で待つ。

5分前になると夫のスリッパの横で待機する。

5分前というと夫は、まだバスの中。

それなのに何故、分かるんだろう??

同じ時刻に帰るわけでもないというのに。

大吉が玄関に行くと、わたしは食事をあたためる。

大吉の腹時計は正確!外したことはない。

笑う猫

むふふふ

夕食の後のお楽しみは、わたしたちとの散歩だ。

大吉の好きなように歩かせる。

大吉の縄張りがほの見える。

あちこち歩いて、最後は近所の公園まで行く。

大吉は、ぐるぐる走り回る。

きっと笑顔。

わたしは満ち足りてブランコを漕ぐ。

・・満天の星が降る。

 

これが大吉の一日。

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