第二部 ②なんということでしょう

愛想なしの猫 庭猫 
あいそなしのねこ

第二部 ②なんということでしょう

 

黒猫は濡れ縁に飛び乗って、かすかに鳴いた。
お腹がすいているらしい。
そうはいっても、
痩せてはいないし汚れてもいない。
きっと、近所の飼い猫だろう。

「おうちに帰りなさい」
猫は、聴く耳持たず、という感じで、
濡れ縁に陣取って動こうとしない。

大吉のごはんが残っていたのを思い出した。

「ちょっと待っててね」
パウチの封を切って、大吉のお皿に入れた。

・・久しぶりだ・・
猫のごはんを用意するなんて。

小さな猫には多すぎるように思った。
ところが黒猫はペロリとたいらげた。
そればかりか、もっとおくれ、という様子。

もしかしたら、迷子かもしれない。
すこし足止めして様子を観察しよう。

「チュールもどうぞ」と、
一本、お皿に押し出した。
それもペロリと召し上がったが、
急に首をのばしてキョロキョロしだした。
『ここはどこだろう』という感じ。

観察中の私と目が合った。
すると。
・・なんということでしょう・・

黒猫は、とつぜん、用事でも思い出したみたいに、
身をひるがえして庭から出て行ってしまったのだ。

お腹がいっぱいになるや、
ありがとうのあいさつもなく出て行くなんて、
猫の風上にもおけないヤツだわ!

どんな猫でも、たいていは、
まんぞくげに毛づくろいなどするはずなのに・・
お世辞でも、うれしげな眼をしてくれるのに・・

ちぇ・・
私はひどくがっかりして、
裏切られたような気分になった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました