第二部 ⑤名前は凛
猫友だちから電話があった。
「猫を引き取りたいという人がいる」と。
子どもが三人いる人だという。
まだ、どこかの飼い猫だという疑念が捨てきれない。
なにしろ、きれいすぎる猫だったから。
買い物の帰りに、偶然、
猫を引き取りたいと言っている人に会った。
いろいろと話をしているうちに、
「押すとジャーッとカリカリが出てくるの、
あるでしょ。あれって、高いんですかね。
いちいち、エサやるのって、
めんどくさいじゃないですかぁ」という。
「・・・」
お断りした。
そうこうしているうちに、
黒猫の様子がおかしくなった。
涙目になって、コホコホ、咳き込む。
猫インフルエンザにかかっていた。
さ迷っている間に、引き込んだらしい。
またしても動物病院通いが始まった。
カルテのこともあって、
名前も必要になった。
いろいろ考えたすえに、
潔く黒いので、【凛】と名付けた。
診察台では、私にヒシッとしがみ付いた。
その毛なみのやわらかさと、頼りないほどの小ささ。
・・凛をウチの猫にしよう。
だって、どこからも問い合わせがないのだから。
ふたたび猫飼いになったという実感がわいた。
借り物の小さなケージはお返しした。
だけど、凛は、ケージが無くなると、
とたんに落ち着かない様子になった。
自由になったとは思わないらしかった。
ケージが逃げどころだったのかもしれない。
どんな環境に居たのだろう?
それなら、と少し大きめのケージを買い求めた。
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