(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ⑥ミケちゃんの家出

三毛猫庭猫 
ミケちゃん

(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ⑥ミケちゃんの家出

 

追い落とし事件から少し後のこと。

 

「ミケちゃんが居なくなった」という知らせが、М氏から入った。

何日も帰らないらしい。

にゃんこ亭には、ときおり姿を見せてはいたが、

長く居続けるということは、なくなっていた。

気づくと、姿が消えているという感じ。

 

そして、そのうち、にゃんこ亭にもパタリと来なくなった。

 

相変わらず、日参しているクロミちゃんが、

なにかの鍵を握っているのは、たしかだ。

なにしろ、追い落とした張本人(猫)だからね。

二匹の間で、どんな話し合いがあったのだろう。

元気のない猫

 

「ちょっと、クロミちゃん。

ミケちゃん、居なくなったらしいわね。

どこに行ったのかな?心配だわね。

クロミちゃんが、あんなひどいことするから、

ミケちゃんは、うんざりして出て行ってしまったのよ。

はっきりいうけど、ミケちゃんは、きれいだし性格がいいから、

どんなおウチでも、置いてくれるでしょうね・・」

物置の上にいるクロミちゃんに声をかける。

 

「きれい」と「性格がいい」というところを、何度も強めに言う。

エヘンといばった顔をしながら、目をふせた。

ふせた目の端から、わたしを見ている。

後ろめたいのだな・・。

猫と付き合っているうちに、

表情のかすかな動きも分かるようになっていた。

 

「このまま、居なくなったらたいへんよ!

なんとしても、ミケちゃんを捜さないとね。

写真、たくさんあるから、良かったわぁ」

クロミちゃんは、目をふせたまま、

商店街のほうに、体ごとぐるりと向きを変えた。

『ミケちゃんは商店街の方にいる』と、お返事をしたように思った。

 

翌日から、ミケちゃんの写真を手に商店街を歩いた。

どこのお店でも、分からないという返事。

頼みの綱は「ねぎや」の大将。

【⑤ねぎ黒はとてもクール 参照】

焼き鳥を焼きながら、見ていないと首を振った。

・・ということは、商店街ではないのだろうか。

 

まてよ・・。

クロミは商店街の方向を向いたけれど、

そのまた向こうの戸建てかも、という考えが浮かんだ。

母猫のぞうきん猫が、そちらの住宅街のほうに、

居場所を替えていることを思い出したからだった。

ミケちゃんは、ぞうきん母さんを頼ったのかもしれない。

【(6)5匹の子猫 ④協力を申し出る 参照】

 

そんな矢先、М氏がミケちゃんを発見した。

想像は、どんぴしゃり!

商店街の向こうの、あるお宅の庭先で、

のんびり日向ぼっこしていたという。

 

「ミケ!」と呼んだら、『しまった!』という顔をして、

あさってのほうを向いたと、苦々しげに言った。

そのお宅に訳を話して連れ戻したのだが、

М氏はショックを受けていた。

【(7)里帰り猫 ②ミケちゃん 参照】

 

М氏は、家出に懲りて、ミケちゃんに赤い首輪を付けた。

コメント

  1. PINO より:

    猫使いさま。
    こんにちは。
    オリンピックもいいけど、猫使いさんのブログ、毎回、楽しみにしています。絵も、内容にぴったりで、癒されます
    この後、どうなるのかな、ドキドキ❗️しています。

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