(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ⑧番外編 「猫たちの会議」

猫の集会 地域猫
猫たちの会議

(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ⑧番外編 「猫たちの会議」

 

近所に台形のレンガの広場がある。

小学生の男の子たちが、ボール遊びに興じるくらい広い。

 

ある秋の日。

そこで、猫たちの会議があった。

 

夕方の陽ざしに照らされて、

40匹ぐらいの猫たちが、

丸く輪になっていた。

人目に立つ、明るい時間に・・。

 

猫の会議を目にするのは、初めてだった。

よほど、緊急なことがあったに違いない。

 

まっすぐ、輪の中央を見つめている猫もいれば、

背中を向けて、夕やけを見つめる猫もいる。

となりの猫を見ている猫もいるし、

ときおりあくびをする猫もいる。

 

だけど、みんな、耳をピンと立てて、輪をくずさない。

 

近所の人たちが、すぐそばを通り過ぎる。

それでも、猫たちは動かない。

 

夕方の、せわしない時だったけれど、

わたしは立ち止まって、しばらく見ていた。

 

会議の議長はだれなのか、

見極めたいと思った・・が、

声を張り上げる猫はいない。

 

猫はテレパシーで話すと聞いたことがある。

本当かどうか、分からなかったが、

どの猫も、根気強く、そこにいる。

人には聞こえない、感応の力で、

なにごとかを話し合っているらしい。

 

猫は、飽きっぽいと思っていたのに、

その場を離れる猫はいない。

 

秋の日はつるべ落としだ。

夕日が赤く、猫たちを、つつむ。

三角お耳の影がのびる・・。

くねくねしっぽの影ものびる・・。

 

それでも猫たちは、動かない。

ひたすら輪になっている。

 

いたずらっこたちだって、

なんだか神聖なものを見ているようなまなざしで、

猫たちの会議を、そっと、じっと、見ていた。

 

人知の及ばない儀式・・。

 

人の世の始まりにも、

原初の会議があって、

きっと同じように輪になったろう。

 

シーンと、心に響く・・。

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