(Ⅸ)にゃんこ亭の猫たち ⑤邪魔をする猫
書き上げた原稿をプリントアウトして、
リビングのテーブルに広げていると、
ドシ!っと原稿の上に鎮座して、どいてくれない。
取り上げようとすると、紙に爪を出す。
まるで穴あけパンチみたいに小さな穴が開く。
しかたがないので、飽きるまで座らせておく。
すると、いかにも文章を練っているような顔をして、
お仕事している雰囲気をかもしだす。
大吉にとっては、わたしが仕事机に座り、
ひとりごとを言いなどしながら、
パソコンやら原稿用紙やらに向かっているのは、
どうやら我慢ならないことのようだ。
(同じような理由で電話も嫌いらしい)
自分に眼を向けるように、いろんな要求をする。
『なんかたべたいナ』と、かわいく懇願してみたり、
『なでなさい』『抱っこさせてやろう』と、
ときには威張ったりして、さかんにアピールする。
それでも、効果のないときには、
パソコンに飛び乗り、キーボードの上を歩く。
スクリーンには意味不明の文字が列を作る。
wwww3k9mpppp」」
原稿用紙なら、その上に寝そべり、
紙をぐちゃぐちゃにしてくれる。
そして、そこで、寝たふりをする。
そのままの格好で持ち上げようとすると、
グーの手をして、原稿用紙をわしづかみにする。
ワルモノである。
わたしに言わせれば、
「外で遊んで来たらどうよ」だ。
しかし、そんな時に限って、外には行かない。
そして、うろうろと歩き回っては、
イエーンとか、ウオーンとか聞こえる声で鳴く。
それも、大声で朗々と。
なかなかの声量である。
ゴンドラのおじさんが唄うカンツォーネって、
きっと、こんな感じじゃないのかな、と笑える。
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