(5)猫忍者 クロ ④一族の紹介

庭猫 
ぞうきん猫一族勢揃い

(5)猫忍者 クロ ④一族の紹介

 

翌朝のこと。

障子を開けると、庭の物置の上に、

6匹もの猫がゾロリと勢ぞろいしていた。

クロを囲むようにして、ジッとわたしを見つめている。

なんだろう???

 

あ!

もしかしたら、昨夕の、ごちそう猫缶?

 

なかよしの猫たちは、

鼻を寄せ合って、あいさつをする。

そのときに、

クロのくちもとから良い匂いが漂って、

『おや、おまえ、どこぞでゴチになったようだねぇ』

『へえ、猫道通り二番地のおばはんとこでさぁ』

『ほー、いい匂いじゃねぇか』

『へぇ、うまかったっす!』

という会話があったかもしれない。

 

・・自分たちも欲しいということだろうか?

 

いや、まてよ・・。

どうやら、ちがうようだ!

なぜなら、6匹のなかに、ぞうきん猫がいるからだ。

これは、おねだりのパフォーマンスではない!

ぞうきん猫との付き合いは長いが、

ただの一度も、食べ物をねだったことはないからだ。

 

なぜ、いいきれるかというと、

わたしは何度か、ぞうきん猫にも缶詰をあげたことがある。

おいしそうに食べるのだが、食べたあとで、

いつも、とまどったように、わたしを見つめた。

・・あの、まなざし・・。

そして、決まって、しばらく姿を消した。

 

はたと思い当たった。

物置の上に居並ぶ猫たちは、

「ぞうきん猫の一族」ではないか?

 

昨年夏の台風の時の記憶がよみがえった。

ぞうきん猫に連れられて、

濡れ縁に避難してきた子猫たちは、

黒猫、茶トラ猫、白黒縞猫の3匹だった。

・・クロがそのときの黒猫とすれば、

茶トラ猫と白黒の縞猫も、

くだんの子猫たちということだろう。

その他の2匹も、縁者にちがいない。

なぜなら、

ぞうきん猫の母、にゃんこちゃん似の猫と、

マント嬢似の猫なのだから・・。

 

『わたしのこどもたちなの。

いちおう、しょうかいしておくわね』

そのように、わたしは理解したのだった。

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