(Ⅶ)にゃんこ亭の猫たち ⑦クロミの気骨
子猫時代のクロミちゃんには、おどおどした気弱さがあった。
【(7)里帰り猫ご紹介①クロミちゃん参照】➡
物置の歌姫とか、女王さまとか呼ばれ、
センターを張るようになったクロミちゃんは、
自信たっぷりに君臨して、ときどき冷血でさえある。
気にくわない猫の追い落としにも一役買う。
子猫時代とは、月とスッポンほどの違いだ。
このようにしたのは、誰あろう、このわたしである。
クロミの増長には、少し反省もしている。
美しい三毛嬢が姉妹なので、かわいそうに思ったのだ。
【(7)里帰り猫ご紹介②ミケちゃん参照】➡
実際、三毛嬢ばかりが目立っていて、
「あ~ら、そんな猫もいたわね、すっかり忘れてたわ!」
と、小ばかにしたような口調で、心無いことを言い放った人もいる。
だから、必要以上に[褒め]て[おだてた]!
より美しく見えるようにと心をくだいた。
かわいい首輪、お好みのペンダントの数々。
彼女に捧げた美のアイテムは、他の猫よりずっと多い。
ある冬に作った白いファーの首輪は、彼女をたいそう喜ばせた。
白い毛への[あこがれ]は、想像以上なのだった。
春に外した時、くっきりと跡がついていて、
冬の間、少し苦しくなかったかと、気をもんだものだ。
しかし、猫も、おだてるとその気になる。
どんどん自信をつけて、胸を張ってくる。
『ふふん!あたしって、さいこう!』
その揺るぎない自信が、雄猫たちを引き付けるのか、
クロミちゃんばかりが大モテだった。
自宅であるМ氏宅でも、態度がどんどんデカくなった様子。
しゃなしゃなとお尻を振りながらのウォーキングは、
モンローなんか目じゃなかった。
クロミウォークと名づけたほどだった。
にゃんこ亭に来るときを、見かけたことがある。
大きなペンダントをぶんぶん揺らしながら、
しっぽを素敵に動かして、一生懸命走っていた。
そうかと思うと、つと立ち止まり、一息入れて、
ゆっくりとしたクロミウォークでしゃなしゃな歩く。
しっぽをクネクネ動かす様子は、
まるで、小さなバックを手に持って、
ウインドーショッピングをしているようだった。
ふと、「おしゃれ泥棒」のヘップバーンを思い出したものだ。
美しくあろうと、日々の努力を惜しまずに、
頭も爪もキリキリと研ぎ澄ましていた猫である。
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