(4)マント嬢 ⑥マントさま改め マント嬢
しばらく経ったある日のこと。
わたしの話を聞いた知り合いが、
「その猫なら、うちの近所の猫よ。
まちがいないわ。
小学生の男の子のいるおうち。
その子が、外にいた猫を抱き上げて、
さ、帰ろうかといって、
家に入るのを見たことがあるの。
きれいな猫だから、よく覚えているわよ」
というのだった。
やっぱりそうか・・。
毎朝8時に来るのは、
男の子を小学校に見送ったあとに違いない・・。
なるほど、日曜日はゆっくり来るはずだ・・。
マントさまのためには、喜ばなければならないだろう。
ほどなく、べつの知り合いから、
「あそこの猫ちゃんは女の子よ。3歳くらいらしいわ」
という情報も、もたらされたのだった。
女の子だったとは!
男の子だとばかり思っていたわたしにとって、
マントさま、という呼び名は、かなり紳士的であった。
キャラクターでいうと、シャーロック・ホームズ。
いや、正直にいうと、
ホームズに扮するジェレミー・ブレッドさまのような・・。
このままでもいいと思ったが、
「マントさま」と呼んだとたん、
わたしのイメージの中で、
猫はパイプをくゆらすのだった。
うーん、さすがに、パイプはふかさんよ。
とはいえ、マントを羽織っているように見えるのは、
マントさまの特徴だったから、
いまさら「マント」を変えるわけにはいかない。
考えた末、
「マントさま」あらため「マント嬢」になったのだった。
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