(Ⅱ)にゃんこ亭の猫たち ⑥タクちゃん (1997年 夏)
迷子の子猫がいた。
見つけたのはМ氏で、なにはともあれ保護。
М氏の友人Tさんの作ったビラが、
翌日から、いたるところに貼られたのだった。
【迷子猫のお知らせ!
8月〇日。夜7時頃。○○付近。
縞猫の男の子。6か月くらい。
キムタク似のイケメン猫。(写真)
しっぽは短い。眼の色は黄色。
連絡先〇〇Мまで】
どこからも連絡はなかった。
結果、子猫はМ氏宅の6匹目の猫に納まった。
名前は「タクちゃん」と決定!
クマくんの反応が気にかかったが、
2匹は最初から、とても相性が良いらしくて、
いっしょにお散歩するようになっていた。
先輩クマくんが後輩タクちゃんに、
知っている限りの事を教えている様子だった。
ある日、見かけたので、
「あら、おさんぽしてるの?いいわねぇ」
声をかけると、タクちゃんは嬉しそうに短いしっぽを振ったが、
クマくんはうるさそうに、わたしを黙殺した。
『だまってて!』『こえをかけないで!』って感じ。
わたしがそこに居ないかのようにふるまって、
タクちゃんを促して歩み去った。
『にゃんこ亭のオバは、いちいち、うるさいんだよね』
というオモムキ。
そうかと思うと、
『きょうは、いいとこにつれてってやるよ。
にゃんこ亭ってとこさ。みんなには、ないしょな』
アニキ風を吹かせて、
タクちゃんを連れて来ることもあった。
幼い者をいたわる気持ちは、猫も人も同じらしい。
130センチの高さの、にゃんこ亭の物置に、
どうしたらスラリと飛び乗ることができるか、
なんどか、クマちゃんがお手本をみせた。
タクちゃんが木登りすれば、見上げながら気に掛けている。
細い側溝を越えるときにも、振りかえって、
クマくんはタクちゃんを、じっと待っているのだ。
『ぼくたち、おとこどうしだもんな!』
お散歩している2匹の姿は、
仲良しの小さな男の子たちが、
肩を組んで歩いているようで、
なんとも微笑ましく、愛らしいのだった。
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