第二部 ④どこから来たのだろう?
黒猫は、女の子で、いたって健康体だった。
獣医は歯を診て、1歳にはなっているようだ、と言った。
半年ぐらいの子猫だとばかり思っていたので、私はとても驚いた。
毛並みも美しいし、爪も柔らかい。
さまよって苦労した様子は見られなかった。
最近まで誰かに飼われていたとしか思えない。
もしや、近所の猫なのでは?と思ったものの、
[猫が逃げた]という情報は聞こえてこなかった。
警察署の報告でも、失踪届は出ていないのだから。
疑問ばかりが残ったものの、
やはり保護しなければ・・。
そのうち飼い主が現れるかもしれない。
とりあえず、獣医から小さなケージを借りた。
猫はケージの中に、自ら進んで入る、という感じだった。
猫も、私たちを観察していたのかもしれない。
『信じていいのかしらね』・・と。
家の中の探検なんてしない。
ごはんを食べると、
『じゃ、これで』と、
さっさとケージに入ってしまうのだった。
丸い爪とぎだけはお気に入りのようで、
爪とぎの中で丸くなっていた時は、私も嬉しかった。
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