(4)マント嬢 ③賭け
「明日の2時ごろ、猫が遊びに来ます!」
夕飯を食べながら、家族に告げた。
(夕餉のメニューはドライカレーだったのね)
「どういうこと?」
娘と夫が聞き返した。
「今日、約束したのよ」
わたしは、昼過ぎに出会った賢い縞猫のことを、詳しく話した。
言下に夫がいった。
「バッカじゃないの!!
猫がことばを理解してると思ってるなんて!
しかも、猫が人と約束するなんて、本気で思ってるわけ?
そのうえ、時間を認識してるってぇ?」
あきれ果てている。
娘も首をかしげて、
「来ないと思うな」と、あわれむようにいう。
そして、
「でも、どうして明日なの?
すぐに来てもらえばよかったのに」といった。
その日は両手に買い物荷物をぶらさげていた。。
クリーニング済のスーツも受け取っていた。
かの猫をお招きしたとして、
冷蔵庫をバタバタ開け閉めするだろうし、
ガサガサと耳ざわりな音も立てるだろう。
{猫はびっくりするんじゃないか}
というのが、「明日ね」の理由。
しかも、猫には用事がありそうだった。
「明日、ぜったい来ますって!
すごい猫なんだから!
だって、約束したんだもんね。
あの猫に会ってないから、
あなたたちはそんなこと思うのよ。
あの賢い猫に失礼でしょ」
ふたりは顔を見合って、しらけきっている。
こんなに超おもしろ猫の話は、
身を乗り出して喜んでくれると思っていたのに、
「ちぇ、つまんないのぉ」
わたしは、がっかりしてしまった。
「じゃあ、賭けよう!来るに千円!」
無茶ぶりするわたしの悪い癖が、むくり、頭をもたげた。
「いいよ!」夫が応じた。
勝ちを確信しているかのように。
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