(Ⅴ)にゃんこ亭の猫たち ⑥おしゃべりする猫
クロミちゃんは人語をしゃべる。
最初は、真似だったと思う。
でも、「真似る」は「学ぶ」!でしょ♡
最初の言葉は、『おあよー』だった。
それが、はっきりと『おはよう』と、
発音できるようになるまで、
さほど時間はかからなかった。
しかも、かしこい彼女は、「おはよう」は朝のあいさつで、
夜には適さないことを、じょじょに学んだらしい。
そして、ある夕方、『こんばんは』といったのだ。
これには、とても驚いた ( ゚Д゚)
「こんばんは」は、難易度が高いらしく、
『かんかんわ』と聞こえたけれど・・。
教えようとしたことは一度もなかった。
クロミちゃんは褒められることが大好きだったから、
きっと、日々、努力を重ねたにちがいない。
クロミちゃんの家(М氏宅)は、毎朝8時が猫たちのごはんタイム。
М氏が用意を始めると、にゃんこ亭に走るらしい。
『あ、ごはんの時間か。じゃ、行かなくっちゃ』って感じで。
ドアを開けると、『おはよう』といいながら、
すらりと中に入ってくる。
クロミちゃんにとっては、
にゃんこ亭のカリカリが朝ごはんだから、
おやつとしてではなく、しっかりとした量をお皿に入れる。
といっても、大食漢ではないから、
様子を見ながら、追加して欲しそうなときには、
「もっとほしい?」とか、「もっと食べる?」とか聞く。
そのうち彼女は、もうすこし欲しいと思った時に、
私の眼を見上げて、『もっと』というようになった。
一緒に飼われている、ミケちゃんとタクちゃんにも、
わたしは同じように接しているのだけれど、
もっと、の意味を知り、『もっと、ちょうだい』と、
自分の意思を伝えようとするのは、クロミちゃんだけだ。
『おばぁ』というのは、おばさん(わたしの事)だし、
『なん』は、「はい」というお返事。
『しゃんぷう』『おかいもの』『くりえいと』『かえるの(帰るの)』も得意な言葉。
人の言葉をしゃべる時のクロミちゃんを観察してみた。
①最初に、下あごだけを器用に左右に動かす。
②それに合わせるように、舌をヒラヒラと動かし、音声を発する。
真似をしてみたが、下あごは横に、舌は軽く上下に、
という逆の動きを同時に行うのは、わたしには出来なかった。
この発声のしかたは、彼女が歌う時にも発揮される。
①と②の動作をしながら、
のどの奥でコロロンと音をころがしたり、
ゴローンと、高らかに長く伸ばしたりして、
レロレロ、ウェイウェイと聞こえる音を作り出す。
その音を、たくみに組み合わせ、
複雑なうたい方を編み出しているのだった。
かなり高度な技である。
猫たちとはずいぶん知り合いになったけれど、
複雑な発声で、高らかに歌い上げる猫は、クロミちゃんだけ。
まったく、ほれぼれするほど頭の良い猫なのである。
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