(6)5匹の子猫 ③どろぼう猫 (8月末)
ぞうきん猫は、くたびれているようだ。
月桂樹の下で、ぐっすり眠っていることもある。
これまでの子育てとは様子がちがう。
なんだか、心配になってくる。
だが、子猫たちも、大分しっかりしてきたから、
そろそろ、自分たちで食餌を調達するのではないか・・。
そんな期待をしていた頃のことだ。
隣家の庭の木の根元に、
引き裂かれたパンの袋がころがっていた。
中には、食べかけの調理パンが入っていて、
アリが、わんさかたかっている。
(いやだな、どこのいたずらっ子かしら)
外から悪ふざけをして、投げ入れたと思ったのである。
ところが、翌日もまた、同じ所に、同じようにあった。
これは、子どものいたずらではない。
いやな予感がした。
パン屋さんの前を通ると、ドアに張り紙があった。
【猫が入り込むのでドアは閉めています】
(まさか)と(やっぱり)が交互に胸に浮かぶ。
「あの・・猫がパンを盗るんですか?」
「ええ。この間、黒いどろぼう猫が・・」
ぎょっとしたが、何食わぬ顔で訊く。
「食べますか?猫がパンを・・」
「調理パンのソーセージなんかは、食べそうですよ」
・・たしかに調理パンだった・・。
あの誇り高いぞうきん猫が、
どろぼう猫というレッテルを貼られた・・。
切羽詰まっているということなのだろう。
わたしは、ある決意をした。
コメント
ぞうきん猫、かわいい! 母猫、頑張れ!
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