(Ⅶ)にゃんこ亭の猫たち ⑨大吉の病気【その2】
さて、もともとが自由猫の大吉くん。
自宅療養なんて、できるんだろうか?
不安をかかえながら、借りたケージを組み立てた。
最近でこそ撫でさせてくれるものの、
誰もが口をそろえるほどの乱暴猫だ。
きっと、『外に出せ!』と凄むに違いない。
爪も牙も出すんだろうな・・。
しかし、引き受けたからには、責任がある。
ともかく、安静に療養させてやろうじゃないか!
ケージは、半畳を超えるほどの大きさで、高さも1メートルある。
寂しくないように、サンルームに置くことに決めた。
庭に面しているから、大吉にとっては見慣れた景色が見える。
明るすぎないように、大きな布で覆ってみたら、
なかなかいい具合の介護ケージが出来上がった。
さて、くだんの大吉の反応はいかに?
案の定、ケージに入れたとたんに大暴れした。
暴れに暴れたあげくに、のぶとい声で鳴き吠えた。
『外に出せー!レロレロレロ!オワオワー!!』
レロレロオワオワはどうやら、悪口雑言らしい。
ここで怯んだら負けだ。
「わたしだって嫌だけど、がまんしてるの!
あんたなんか、良くなったら、狸一族が住む山に放り出してやる!」
その山の狸の親分は、ものすごく強い!とおどしにおどす。
「あんたなんか、皮もはがれて吊るされるだろう!」
そんな山、どこにあるのかと問われたら、応えに窮する。
おどかすための嘘八百なんだから。
猫とケンカするわたしは、傍から見るとバカだろう。
でも、必死!目を剥きだしている!
そして、ついに勝った!!!
しかし、実際の勝利者は、掃除機だった。
大吉が吠え凄む。
わたしは「狸の親分は」と、ひとしきりおどした後で、
涼しい顔をして、掃除機のスイッチを入れる。
【ブオー!】掃除機がうなりをあげると、大吉はしぼんだ。
可哀想なくらいに、ぺしゃんこになる。
掃除機は、大吉の[庭へ出せ攻撃]そのものも、鎮めた。
庭へ出るドアの前と玄関に、一台ずつ置いて、
『出せ!』とすごんだら、すかさずスイッチを入れる。
『出せ!』【ブオウ―!】ぺしゃんこ・・ってな具合。
しかし、敵もさるもので、
五日目の朝に、LANケーブルを噛みちぎっていた。
微弱な電圧だから大事には至らなかったものの、
感電していたらと思うと、肝が冷えたものだった。
こうやって、獣医師との約束の[一週間]は過ぎた。
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