⚫最終章 ⑧夜の脱走

庭の猫 飼い猫
日盛りの庭に出る

⚫最終章 

⑧夜の脱走

 

・8月3日
照りつける陽ざしの中、
ひと月ぶりに、30分だけ庭に出る。
草や土の匂いを嗅いでいたが、
ふいに物置の上へ大ジャンプ!
ふらふらの体で・・
そんなにも外に出たかったのか・・

今夜、一緒に散歩しようと決めた。

夜 8時。
散歩のためにリードを付ける。
外が大得意の大吉には、
リードなど、さぞや屈辱だろう・・
が、こんなに酷い状態で、
もし何かあったらと思うと、付けずにはいられない。

夫と大吉はふたり、
戸締りをする私を、外で待っていた。
散歩靴を履いていると、
「ああっ!」という夫の声が聞こえた。
そのあと何か叫んでいる。
「大吉が逃げた!」と言っているのだった。

夫によると、大吉は突然、
ものすごい雄叫びをあげて、ごろりと転がるや、
両手(両前足)で首輪を外し、
脱兎のごとく逃げたというのだ!!

首輪を外した??
どういうことだろう。

その夜は、リードを付ける目的があったため、
引っ張れば外せる猫用の首輪ではなく、
犬用の頑丈な首輪をしていたのだった。

犬用の首輪は、容易には外せない。
一方に付いている太い3個の爪が、
片方の受けにパチンとはまって、
受けの中で広がるように出来ている。
外そうとするときは、
受けの両側に出ている出っ張りを、
力いっぱい押さなければならない。

それなのに、いとも簡単に、
両手で押して外したという・・

⚘~~⚘~~⚘~~

さんざん、植え込みの中や、
散歩コースを捜したけれど、
大吉は見つからないのだった。
まさか、このまま帰って来ないのだろうか・・
あんなに衰えてしまったのだもの、
どこかで死んでしまうのではないだろうか・・
不安がよぎる。
気をもんでいた11時過ぎ。
庭のドアに気配があった。
帰って来たのだった!!!

⚘~~⚘~~⚘~~

どこに行ってきたのだろう。
どこを見てきたのだろう。
ナワバリは無事だったのだろうか。
サヨナラは言えたのだろうか。

帰って来た大吉は、
同じく病んではいるけれど、
すっきりと透明で、
むしろはればれとさえ見える。
よかった・・
逃げてくれて・・
そうでなければ、
想いを残すところだった・・

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