(3)ぞうきん猫 ④初めての子ども (1991年 秋)

庭猫 

(3)ぞうきん猫 ④初めての子ども (1991年 秋)

 

ある日のこと。
どこかで子猫の声がした。どこだろう?・・かすかな声だ。
濡れ縁の下から聞こえてくる。のぞくと、いた!

白とチャコールグレーの縞模様の子猫が一匹。
そばには、ぞうきん猫がいて、さかんに子猫をなめまわしている。
かわいくてかわいくてしょうがないって感じだ。

それなのに・・・
「あらぁ、こんなとこで子育てされたんじゃ、こまるわ。
だめよ。子猫を連れて、出てってよ。はやく!」

なんという無慈悲なことばだ。
鬼じゃないか!
しかし、当時のわたしは、たしかにそう言ったのだった。

ぞうきん猫は、横目でわたしを見ながら、『わかったわよ』といった。
そして子猫をうながしてフェンスの外に出て行った。
・・胸もとの真っ白な美しい子猫だった。

数時間後、ほんとうに居なくなったことを確かめようと、濡れ縁の下をのぞいた。
そこには、娘のお砂場セットが置いてあったのだが、
プラスチックの一輪車(猫車)のなかに、一本の猫糞があった。
どんなふうに踏ん張って、ウンチをしたのだろう。
一輪車だもの、さぞ、ぐらついたことだろう。

『あんたのかわいいむすめのお道具に、こうしてやるわ。おもいしれ』
ぞうきん猫の声がきこえたように思った。

一本とられた!
いや、一本やられた!か。

したたかな切り返しに、笑いながら、シンとなった。
・・猫だって人だって、子育てをしている母親同士のはずじゃないか・・。
わたしのなかに、そんな感情がわいた。

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