⚫最終章Ⅱ
⑦終わりに
私たちの猫だった大吉を忘れはしない。
忘れないどころか、その存在は日に日に大きくなって、
家の中のお気に入りだった所などは、
もはや聖地のようでさえある。
他所の人の目には、
大吉はどうということのない猫だったろう。
けれども、私たちにとってみれば、
子どもと同じ、無類の存在だった。
人で言えば、ギャングエイジと呼ばれる年齢の、
ワンパクな男の子を育てているように感じていた。
好物をそろえ、
暑さにつけ寒さにつけ心を配りながら、
7年の歳月を一緒に過ごしていたのだった。
大吉の具合が悪くなってから、
動物の救急病院まで、深夜、車を駆ったことも数回ある。
その同じ道を、時おり通ることがあって、
オレンジ色のナトリウム灯が頭上を次々に過ぎるたびに、
あの夏の日に時が戻っていく気がする。
わたしの膝の上には大吉がいて、
バスケットの中で、じっと息をひそめているように思う。
大吉を亡くした悲しみは、時が経つほどに深くなる。
そのさなかには渦巻くようだった悲しみが、
透明に際立って、静かに姿を現すからに違いない。
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猫恋い
緑色の眼・・
その眼が みつめる
もの言いたげに・・
そらすことなく
・・みつめてくる
いつ
君は
死を・・悟ったのだろう
君のいなくなった空間は
あまりに 大きい
庭にも
台所にも
居間にも
書斎にも
寝室にも
・・どこにでも
君の面影が あふれて
苦しいくらいに
わたしを泣かせる・・
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