(Ⅺ)にゃんこ亭の猫たち ③2011 3・11 〈その1〉

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祈り

(Ⅺ)にゃんこ亭の猫たち 

③2011 3・11 〈その1〉

 

あの日。

仙台に住む従姉と、

昼過ぎから、電話でおしゃべりしていた。

 

庭には大吉がいて、中に入りたい様子。

「大吉を入れなくちゃ。またね」

そういって、受話器を置いたのは、

2時43分のこと。

 

いつものように汚れを拭き、

「きれいになったわよ」

と、立ち上がったとき、

庭の月桂樹の葉陰から、

十数羽の小鳥たちが飛びたった。

(・・急にどうしたのかな)

不思議には思いながら、

『おなかすいた』という大吉といっしょに、

キッチンに移動した。

 

2時46分

「さぁて、ぼっちゃん・・」

カタカタ・・

(ん?・・気のせいかな?)

「なにがいいでしょか」

カタカタガタガタ・・・

地震だ!

ガタガタ・・ガガガガ・・・

食器棚の扉が揺れだした。

 

大きい!

どんどん強さを増す!

 

「大ちゃん。こっち」

叫びながら玄関に向かう。

大吉は来ない。

「大ちゃん!大ちゃん!」

必死に叫びながら、ドアを開けた。

足元を、猛スピードで白黒猫が駆け抜けた。

 

一度はおさまったかに思われた揺れは、

再び、大きく建物を揺さぶり始めた。

 

頑丈なコンクリートの建物が、

きしみながら揺れる音は恐ろしい。

ゴゴガガドドバリバリバリ・・

 

近所の人たちが数人、歩道に集まっている。

家に留まるのがいいのか、

外に逃れるのがいいのか、

その時の私は、人恋しさで外に逃れた。

 

丈高い欅の木が大きく揺れながら、

バッサバッサ、建物をこすっているのが見えた。

桜も夏椿も楡も、みんな激しく揺れていた。

 

電気、ガス、水道は正常に機能したので、

すぐにテレビをつけて、情報を集めた。

どうやら、震源域は東北らしいものの、

まだ被害の状況は分かりかねていた。

 

春休みで帰省中の娘は、

たまたま買い物に出かけていた。

出先のエレベーターもエスカレーターも、

直後に停止したというが、

本人は、いたって暢気に帰宅した。

 

勤務先の病院が神田だった夫は、帰宅困難になり、

歯科の診療室に一泊することになった。

 

夜は、娘と大吉と三人でリビングに夜具を敷いた。

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