第二部Ⅴ ⑤水鉄砲
先日、近所のスーパーに、水鉄砲が売っていた。
夏休みが間近なのだなあ、と思いつつ、湧きあがった思い出があった。
ある夏、大きな水鉄砲を購入したことを・・・
マシンガンのような形をしていた水鉄砲は、
たっぷりと水を吸い込んで、何度でも噴射できるのだった。
子どものおもちゃなので、勢いは強くはなかった。
なぜ、水鉄砲を手に入れたのかと言えば、
先代猫の大吉の手助けをするためだった。
え?
それはどういうこと?とお思いでしょう。
大吉には、好敵手がいた。
いや、宿敵というべきか・・
その猫は長毛の整った顔立ちで、性格も穏やか。
いつも正々堂々と勝負して、強かった。
そのうえ、紳士然として牝猫たちに優しかった。
当然、大モテだった。
ハンサムくん!という名前しか思い浮かばないほどだった。➡
大吉はその逆だった。
勝負がついた、と立ち去るハンサムくんの背後から、
意地汚く襲い掛かったりするのだった。➡
こんな戦い方は、猫の世界でも嫌われるのかもしれない。
大吉は牝猫にちっともモテなかった。
大吉が、庭で倒れていたのはその頃のこと。➡
肝臓を壊している、というのが獣医の見立てだった。
飼い猫におさまってからも、ずっと、
プロへパゾン(肝臓薬)のお世話になっていた。
そんな持病のある猫を、
噛み傷だらけにするわけにはいかなかった。
そこで登場したのが水鉄砲!
ヒートアップした猫たちの間に、まさに水を差した!
猫は水が嫌いなうえに、
どこからか飛んでくる水にびっくりして、
二手に分かれて、大ゲンカはお開きとなった。
そのスグレモノは、
夏休みが終わる頃、ふいに壊れた。
たったの、ひと月。
季節物のおもちゃって、そんなものかしら?
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