第二部Ⅲ ④ワクチン接種の日

飼い猫

第二部Ⅲ ④ワクチン接種の日

 

毎年、12月に入ると獣医師からお便りが届く。
凛に【三種混合ワクチン接種のお知らせ】である。

さて、いつ行こうか・・・
かかりつけの獣医は火曜日が休診日。
人のスケジュールもいろいろと詰まっていて、
なんだかんだと、12月は気ぜわしい。
カレンダーとにらめっこしながら予定を組む。

凛は大吉と違って、大きな病気はないので、
ワクチン接種は、年に一度の顔見世興行だ。
もう、嫌がるのなんの!
なので、その日はとにかく秘密裏に事を運ぶ。
ヒソヒソ・・という感じ。
バレるはずはないと思うのに、凛はかぎつける。
むしろヒソヒソでバレるのか?

いつのまにか姿を消している。
予約の時間は迫ってくるしで、
バタバタと走り回って探す羽目になる。
隠れる場所なら分かり切っている、とこちらは思う・・
それなのに、毎回、新鮮な場所に潜んでいる。
いや~、なかなかの【くのいち】であるよ。
今回は、引き寄せてあるカーテンの中に、
ふっくら丸くひっそりと収まっていた。

キャリーケースに入れるのがまた一苦労。
すっぽり入った!と思うと、
しっぽがはみ出ている。
しっぽを押し込む。
ガシ!手が出る。手を外す。
ニョキ!顔が出る。顔を押し込む。
しっぽがと手が同時に出る。
どちらが勝つかの、まさにサドンデス。
『わぁーおぅ!!うぎゃーおぅ!!』
どこから出るのか、胴間声も忘れない。
負けるもんか!こちらも必死だ。
寒いのに大汗かいて、やっとのことで勝った!

医院に入った途端、凛め!また吠えた。
『うぎゃーおぅ!』
「あ、凛ちゃんだなって、すぐわかりました」
一年に一度しかお世話にならないのに、
うぎゃーおぅ!で身元が割れるなんてね・・

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