(Ⅺ)にゃんこ亭の猫たち
⑥朝帰り
物置の上で 大吉は、
かすかな物音さえも聞き逃すまいと、
じっと耳をそばだてる。
カーテンのわずかな揺らぎに、
はねとぶようにして 走り寄る。
うれしさを全身にみなぎらせて、
やっとのことで めぐり会えたみたいに、
ゴロンゴロン
盛大にのどを鳴らして頭突きする。
これが大吉の『ただいま』のあいさつ。
また、ケンカじゃ なかろうね?
またケガをしたのじゃ あるまいね?
待ちくたびれた私は、
心配のあまり、大吉の顔を見たとたん、
プン!!
不機嫌になっている。
汚れた毛をゴシゴシ、拭きまくる。
毛並みなんか おかまいなし。
まるで、泥付き大根でも洗うみたいに、
乱暴に、拭く拭く拭く!
大吉は いつもは怒るくせに、
ずっと待たせたお詫びのように、
神妙に されるがまま。
のどだけは あいかわらず
ゴロンゴロンと、
重低音を奏でている。
もう!ダイちゃんたら!
どれだけ心配したことか!
どうやら、ケガもしていない。
おかえり おかえり
無事でよかった!!
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