(Ⅻ)にゃんこ亭の猫たち ⑨きげんの悪い日

さがしあるく猫 飼い猫
さがしあるく

(Ⅻ)にゃんこ亭の猫たち 

⑨きげんの悪い日

 

大吉に知らせることなく、
買い物などに出かけた時がある。

ぐっすりと眠りこんでいたから。

でも、大吉にとって、
知らぬ間に居なくなるということは、
無作法この上ないものらしい。
「ただいまー」
おみやげを持って帰っても、ずっと不機嫌。
そっぽをむいたり、
うなったりした。

それ以来、
たとえ大吉が眠っていても、
「おかいもの、行ってきますよ」
「ちょっと出かけますよ」
耳元でつぶやいている。
ピクピク、耳が動く。
『りょうかい』とか『オーケー』とか。
『いってらっしゃい』と、
薄目をあけることもある。
とにかく、きちんと、
猫なりの作法があるようだ。

暑い夏。
私は眠くてしかたがなかった。
椅子でうたたねするよりは・・と、
ベッドでひと眠りを決め込んでいると、
大吉の大声が聞こえてきた。
ワァーオ
ワァーオ
『どこォ、オバァー』・・
迷子の子どものように
不安げに、
声をはりあげて、
私をさがしまわっているのだった。

さがしあるく猫

さがしあるく

 

だまって出かけたとき、
きっと、こんなふうに、
大吉は鳴き泣き、
家じゅうを歩いていたのだろう。

だから、
あんなに、
きげんが悪かったのだね・・。

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