第二部Ⅵ ④抱っこ勝負!
先代猫の大吉は、
抱っこするのが大好きだった。
そうはいっても、
外向きにはオレさまだったから、
【抱っこをせがむ】なんてことは、
名折れだとでも思っていたらしい。
で、どうしたか、というと、
どっしりと私の足元に座る。
背中を向けて・・・
『抱っこしたいだろ、オバ。
抱っこさせてやろうか』
という具合に。
「いや、遠慮する」
私はいっかな動かない。
それでも、
7キロ超えの肥えた猫は、
私の手がわきの下に差し入れられるのを、
じっと待っているのだった。
・・大吉の頭がかすかに動く。
『オバ、はやくしないと、しめきるよ』
・・耳が烏賊みたいにひらたくなる。
『もう、飛んでっちゃうよ』
・・しかたがないなぁ・・
私の勝ちだ!
私はニヤニヤする。
ひれ伏すがごとく、
大吉の背中に顔をうずめる。
ギュ―ッ!と抱きしめる。
エメラルドのような眼が私を見つめて、
へへへ・・と笑っている。
結局、勝ったのは大吉だった。
・・あの抱っこ勝負。
もう一度したいよ、オバは・・
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