(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ③クマくんの死 (8月1日 夕方)

クマくんの霊 庭猫 
虹の橋をわたるクマくん

(Ⅲ)にゃんこ亭の猫たち ③クマくんの死 (8月1日 夕方) 

 

翌日の夕方。

玄関のチャイムが鳴った。

友人のK子さんだった。

時間は四時半過ぎ。

 

ドアを開けると、少し青ざめて立っていた。

どうしたんだろう?

・・嫌な予感がする。

「・・あのね・・猫が死んでるのよ。

いま、散歩の帰りなんだけど、アニスが見つけて・・」

アニスとは、彼女の飼っているシェパードだ。

「猫?」

「クマじゃないかと思うの」

「え・・」

ザワザワと体中の神経が騒ぐ。

「・・どこで?」

「すぐそこ」

髪の毛が一瞬、グワッと逆立った。

 

植え込みと建物の間の土の上に、

黒猫が、じっと眼を閉じて、横たわっている。

「クマ・・クマくん!」

呼びかけても応じないけれど、

・・この黒猫はクマに違いない。

 

前日、側溝のところで別れたクマ・・。

元気に遊びに行ったのに、こんな姿になるなんて・・。

ハエが数匹、頭のあたりを飛び回っていて、

命が・・すでに尽きていることが・・分かった。

 

「Мさんところ、留守みたいで・・。

チャイムを鳴らしても応答しないの」

そういえば、М氏はここ数日、出張で留守と聞いていた。

でも、奥さんはいるはずだった。

 

どこかしら?

ふっと、買い物中の奥さんが、眼の奥に「見えた」!!

「八百屋だわ!」

わたしは言いながら駆けだしていた。

 

きっと、クマくんが見せてくれた・・と思う。

やはり、М氏の奥さんは八百屋さんに居たのだった。

 

八百屋さんから、きれいな箱をもらって、

クマくんを入れることにしたが、

じかに入れるのは忍びなくて、

わたしは白いバスタオルを箱の中にひいた。

土の上にいるときには気づかなかったけれど、

耳のあたりと、口の端から出血していて、赤黒く固まっていた。

 

「もしかしたら、まだ息があるかもしれないから、

ともかく動物病院に行こう。車を出すわ」

K子さんが言って、奥さんとクマくんを乗せた。

クマくんの最期は、行き倒れ状態ではなく、

人の手で、きちんと見送ってあげたいと、

K子さんは思ってくれたに違いない。

 

~~~~~~~

 

「やっぱり、だめだったわ・・」と、

数時間後、K子さんから連絡が入った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました