飼い猫

⚫最終章 ⑨タイルにうずくまる

⚫最終章  ⑨タイルにうずくまる ・8月5日 右目は、赤い膿のようなものが流れて、 眼を開かずに閉じたまま。 左目尻がくぼんで、眼の大きさが半分になっている。 お風呂のタイルにうずくまって動かない。 ほどよくヒンヤリするのが良いらしい。 硬...
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⚫最終章 ⑧夜の脱走

⚫最終章  ⑧夜の脱走 ・8月3日 照りつける陽ざしの中、 ひと月ぶりに、30分だけ庭に出る。 草や土の匂いを嗅いでいたが、 ふいに物置の上へ大ジャンプ! ふらふらの体で・・ そんなにも外に出たかったのか・・ 今夜、一緒に散歩しようと決めた...
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⚫最終章 ⑦ひろがる病巣

⚫最終章  ⑦ひろがる病巣 下あごが黒くなっている。 どうしたらよいだろう。 楽に過ごせるようにしてあげたい。 ・8月1日 午前6時30分 生鱈の水煮を40g。 元気そうに見える。 臭いも、あまりしない。 よほど気分が良いのか、 口まわりを...
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⚫最終章 ⑥宣告を受ける

⚫最終章  ⑥宣告を受ける ・7月28日 午前2時 座薬 少し楽になったらしく、 私のベッドで一緒に眠る。 午後、動物病院へ 猫インターフェロン 3回目 点滴(痛み止め、胃薬、抗生剤) 体重5・34㎏ すっかり痩せてしまった。 どんな薬より...
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⚫最終章 ⑤種はちがえども

⚫最終章  ⑤種はちがえども 買い物帰りの私のあとを、 二羽のカラスが付いてくる。 屋根伝いに ピョンピョンと。 そして鳴きかわす。 カーオ クワァクワァクワァ クワーォ グルルーカウ 複雑な鳴き方だ。 何かを問うているようで、 思わず足を...
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⚫最終章 ④病む日々

⚫最終章  ④病む日々 大吉の体内では、 恐ろしい菌が暴れまくっている。 耐えきれぬ痛みだろうに、 わずかに顎をあげ、 じっと目を閉じている。 唾液が糸を引き、口もとを流れる。 そっとぬぐってあげると、 うすく眼を開けて、困ったような顔をす...
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⚫最終章 ③最悪の症状

⚫最終章 ③最悪の症状 猫の白血球数の正常値は、 5000/µℓ~19500/µℓである。 大吉の白血球は1700/µℓだった。 正常値の下限をはるかに下回っていた。 この数値の低さは、 免疫機能が正常にはたらかず感染症に罹りやすい、 とい...
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⚫最終章 ②不気味なサイン

⚫最終章  ②不気味なサイン 暑がりの大吉は、 毎年、夏になると抱っこを嫌がる。 蒸し暑い夜。 珍しいことに、私にピタッと寄り添った。 久しぶりのことなので、 嬉しくてシャッターを切った。 なんとまあ、おめでたいバカ者か!この私は! のぞき...
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⚫最終章 ①奇妙な傷 (2013年 6月)

⚫最終章  ①奇妙な傷 (2013年 6月) 少し前から、 見かけない茶トラの若猫が、 町をのし歩きだしていた。 そればかりか、我が家の生垣の前あたりで、 しきりに鳴いては、存在をアピールする。 大吉は、イライラしはじめたものの、 腕まくり...
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⚫最終章

⚫最終章 2013年 8月12日 午後4時 「大吉くんの好きだった食べ物を、 この器にお入れください」 葬儀社の係の人がいった。 そして、小さな前足に墨を塗って、 足形をとってくれた。 花に埋もれて、 冷たくなった大吉が横たわる。 お坊さん...