(Ⅸ)にゃんこ亭の猫たち ③散歩する猫 【その3】

柿の葉に染まる猫飼い猫
柿の葉に染まる

(Ⅸ)にゃんこ亭の猫たち ③散歩する猫 【その3】

 

前になったり、はるか後ろを歩いていたり、

ふと気づくと、よその家の門の中に入りこんだり、

車のタイヤの匂いを嗅いだりしながら、

大吉は、自分の速度で、好きなように歩いている。

 

あれ、どこかな?

そう思っていると、数軒先のお宅の垣根の中から、

ヒョコッと、あのワカメちゃんカットの頭が出てきたりする。

忍びやかに、ひそやかに、猫足で移動している。

びっくりすると、得意気だ。

きっと、ふふふ・・と笑っている。

ここだよ!

ここだよ!

 

大きな切り株の上に、置物のように動かないこともある。

ジッと眼を凝らして、なにかを見つめている。

どんな気配を感じているのだろう。

もしかしたら、ライバル猫が、

闇の中に潜んでいるのかもしれない。

わたしも少し緊張する。

すると、憑き物でも落ちたみたいに、

パッ!

大きくジャンプして、陽気に駆けだす。

『なんでもないよ』というように。

 

目指すは、お気に入りの公園。

月の光に照らされた夜の公園は、

桜や松や遊具のすべての影が、漆黒に染まっている。

まるで、静かな水の底にいるようだ・・。

ふいに、大吉が走りだす。

夜を飛んでいるかのように走りまわる。

太っている猫とは思えないほどのスピードで、

ぐるぐるぐるぐる走り回る。

『たのしいな~』と、はしゃいでいる。

夜の公園で猫と

夜の公園で

 

わたしは、ブランコを漕ぐ。

夜空に飛び出すように漕いでいる。

月も勢いよく動く。

コメント

  1. みつば より:

    すごく、ステキです‼️
    光景が浮かんできて、いつも癒やされてます。
    大吉くん、かわいい。
    ランボウ猫なんて、思えません。

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